治工具とは

治工具（じこうぐ）とは、「治具（じぐ）」と「工具（こうぐ）」を合わせた総称です。治具・工具はどちらも製造現場では欠かせないもので、製品の品質向上や現場作業の効率化を図る上で、治工具の選定や制作は非常に重要なものといえます。

治具とは、加工や組立、検査などの作業を手助けする補助器具のことを指しており、英単語「jig」に漢字を当てたものです。加工物を固定し、位置決めや作業の案内・誘導などをする役割があります。英語の「jig」は工具の位置合せ／案内機構のことだけを指していますが、日本語の「治具」は工作物側の位置決めと締め付け固定する取付具（fixture）の意味も含まれています。

治具を使用することで、製品の精度のバラツキを最小限に抑え品質を安定させることができます。また、早く作業ができる様になるため、同一製品を大量生産する際に重宝されます。

補助の役割を持つ治具ですが、加工物や加工内容に合わせて一つ一つ専用のものが作られることが多いです。

工具とは、工作に使用される道具や機械のことです。機械加工に用いるもの、電気工事に用いるもの、大工仕事に用いるものなど多種多様な種類があります。工作機械に使用される刃物も工具と呼ばれます。機械加工に用いられる工具としては、ドリル・エンドミル・バイト・砥石などがあります。

つまり、工具は金属を削るなど加工を直接的に行う道具で、治具は加工をサポートする道具です。

これら治工具はそのものが何かの部品になることはありませんが、機械加工においてはとても重要でかつ部品以上の精度が要求される大事なものです。

治具の種類と用途

治具にはさまざまな種類がありますが、代表的ものをご紹介します。

固定治具

加工物を動かないように固定する治具です。

例としては、バイス（万力）・クランプ（万力）・位置決めピン・調整ブロックなどがあります。

バイス（引用：株式会社ナベヤ）

切断治具

加工物を決められた大きさに切断したり、断位置・方向などを正しく導いたりするための治具です。

例としては、裁断機などがあります。

コルゲート切断治具（引用：株式会社MKエレクトロニクス）

挿入治具・引抜治具

加工物を決まった位置に挿入、もしくは引き抜く際に使用する治具です。主にベアリングなどの周囲との隙間がほとんどない箇所の挿入・引抜を行うときに使用されます。 例としては、プーラー・ピン引抜治具などがあります。

ブーラー（引用：株式会社エスコ）

溶着治具

加工物同士を接着するための治具です。中にはアーク溶接やレーザー溶接をサポートする治具もあります。

例としては、シーラーなどがあります。

シーラー（引用：富士インパルス株式会社）

塗装治具

加工物の塗装を補助する治具です。

例としては、ステンシル・ハンガーなどがあります。

ステンシル（引用：株式会社アイマーク）

カシメ治具

加工物同士を潰したり締めつけたりして接合部分を固定する治具です。

例としては、自転車のチェーンなどがあります。

ローラー治具（引用：株式会社 弘機商会）

検査治具

製品を検査・測定する際に固定する治具です。形状が複雑で測定しづらい製品を簡単に検査しやするためのものです。

検査治具（引用：株式会社ファム）

その他にも、セットした加工物に曲げ加工を行う「曲げ治具」など様々な種類の治具があります。

工具の種類と用途

工具にはさまざまな種類がありますが、今回は切削加工に使用される工具について代表的なものをご紹介します。

フライス

フライスは、フライス加工で使用される回転切削工具の総称です。円板もしくは円筒体で、外周に多くの刃があり、これを回転させて被削材を様々な形状に削っていきます。主にマシニングセンタやフライス盤などに取り付けて使用されます。エンドミル、正面フライス、平フライス、側フライス、溝フライスなどの種類があります。

エンドミル

フライスの一種で、外周の刃と端面の刃で被削材を切削する工具です。エンドミルとドリルは形状が似ていますが、エンドミルは横方向の加工、ドリルは垂直方向の加工に使用されます。曲線や溝・スリットなどの複雑な形状の製品を加工することが可能です。スクエアエンドミル、ボールエンドミル、ラジアスエンドミルなどの種類があります。

引用：さくさく株式会社

ドリル

ドリルは穴あけ加工に使用される切削工具です。主にボール盤やハンドドリルなどに取り付けて使用されます。穴の径や深さなどに応じてさまざまな種類が使い分けされます。ツイストドリル、ルーマ形ドリル、センタ穴ドリル、段付きドリルなどの種類があります。また、構造の分類ではムクドリル（ソリッドドリル）、チップ式ドリル、ヘッド交換式ドリルなどに分類されます。

引用：トラスコ中山株式会社

リーマ

リーマはドリルであけた穴の内面や表面粗さの仕上げ加工を行う切削工具です。高い精度が求められる製品の穴加工をする場合に使用されます。ストレートリーマ、ブローチリーマ、テーパリーマなどの種類があります。

引用：オーエスジー株式会社

タップ

タップはドリルであけた下穴にねじ山（雌ねじ）を作る切削工具です。主に手作業による加工やボール盤、フライス盤、旋盤などで使用されます。また、タッピング盤というタップ加工専用の工作機械でも使用されます。ハンドタップ、ポイントタップ、スパイラルタップなどの種類があります。

引用：オーエスジー株式会社

バイト

バイトは、旋盤や平削り盤などの刃物を固定し、被削材を動かして削っていく加工で使用される切削工具です。バイトの先端には「チップ」や「インサート」とよばれる刃先が付いており、その形によってさまざまな形状に加工することが出来ます。片刃バイト、剣バイト、突切りバイト、中ぐり（ボーリング）バイト、ねじ切りバイト、ロータリーバイトなどの種類があります。また、構造の分類ではムクバイト、付刃（ロウ付け）バイト、スローアウェイ（チップ交換式）バイトなどに分類されます。

引用：株式会社三和製作所

その他にも、ダイス、研削砥石、ホブなどの切削工具があります。

このように「治具」「工具」には、さまざまな種類があります。機械加工では製品の形状によって最適な加工法を選び、その加工法に合った治具・工具を使用し加工することが大切です。

弊社での製品事例

本記事で解説した治工具ついて、弊社で製作した製品について紹介します。

加工治具　半導体製造装置　アルミ　短納期

スペック・仕様

材質	A5052
ロット	5ヶ/ロット
大きさ	φ15×60L
公差レベル	±0.01～一般公差
納期目安	約2週間
金額	1万円未満
製品用途・業界	半導体製造装置

本製品は半導体材料をカットするための加工治具です。材質はA5052を使用しております。

今回の製品は半導体向けの製品であるため、キズ厳禁の製品となっておりました。弊社ではキズ注意品に対する扱いに慣れており、キズに対しての対応ノウハウを保有しております。また、受注～納品まで約2週間での短納期で対応することが出来ました。

ブロック　SS400 治工具　3価クロメート

スペック・仕様

材質	SS400
ロット	2ヶ/ロット
大きさ	40×50×200
公差レベル	一般公差
納期目安	約3週間
金額	1万円以上10万円未満
製品用途・業界	エネルギー(発電機、タービン、原子力)

本製品は大型モーターの組立作業に使用する治工具です。材質はSS400を使用しております。

今回の製品は切削加工した後、3価クロメートのメッキ処理を行いました。弊社では部品加工からメッキ処理までワンストップで行っておりますので、メッキ込みで2～3週間以内での対応が可能です。メッキだけではなく塗装・熱処理等の後行程も対応可能です。また、加工だけではなく治工具の設計からの検討も可能です。

その他にも製品事例を掲載しておりますので以下のサイトもぜひご覧ください。＞＞＞治工具の製品事例についてはこちら

以上、治工具とは、その種類と用途、弊社での事例についてもご紹介いたしました。

加工の相談窓口を運営している株式会社今橋製作所では、本記事で解説しました治工具の製作実績が多数ございます。お客様のご要望に合わせて、材質選定、加工方法等をご提案させていただきます。技術相談も承りますので、ぜひ一度ご相談下さい。